昼間でも祇園は賑っていた。
「葛餅でも食べますか」
総司はにこりと笑った。栞は表情を変えない。いつもそうだった。けれど総司には、栞の気持ちがなんとなくだがわかる。
「!」
「どうかしましたか?」
一瞬栞の動きが止まった様に見えた。
「いや」
栞はしらばっくれるが、明らかにおかしい。
視線の先を…
「では失礼します」
「おい総司」
「はい」
「近頃、妙な奴とつるんでいるようだが?」
「あれぇ。なんで土方さんにはバレますかねー」
「俺の監察方をナメんなよ?」
「あはは、それもそうか」
ここは泣く子も黙る新選組の副長室。そこに鬼と呼ばれる副長・土方歳三と、パッと見女子のような可愛らしい見目の小柄な一番隊隊長・沖田総司…
「二人の沖田(短篇)」を読んで下さった方、誠に有り難う御座います。
実はその「二人の沖田(短篇)」とは別に「二人の沖田(長篇)」をずっと前に書き貯めておりまして、まだ完成はしておりませんが途中まで放出しようと思います。
主人公などの基本的な設定は短篇とあまり変わりはありませんが、ストーリー自体はだいぶ変わります。短篇では…
※2008年12月頃に書いたものです
※一部修正
※未完です
「焼き討ちは、延期するべきだ」
と、久坂が言い出したのは決行予定日の三日前だった。
「何だと…?」
晋作のこめかみがぴくりと動いた。
「理由を言え、久坂」
「東禅寺の事件のほとぼりが未だ冷めておらぬ」
「馬鹿かお前は」
晋作…
※2008年12月頃に書いたものです
※一部修正
「高杉はどこにいる…!」
久坂は苛々していた。
「土蔵相模です」
「またか…!」
それと言うのも高杉が、土蔵相模という料亭に入り浸っているせいだった。女を揚げ、酒を飲み、最近は一向に帰る景色はない。これからは色々と資金が必要になってくるというのに、晋作に至…
※2008年12月頃に書いたものです
※未完です
「貴殿等は、俺が何故行動に移そうとしないか、歯痒く思っていることと思う。腰抜け、うつけ、裏切者と罵っているかも知れない。だがここで、言い訳を述べるのを許されるのなら、俺は孝行というものを第一に重んじるということを言っておきたい。俺の愚父は根っからの保守思想で、故に松下村塾…
※2008年11月頃に書いたものです
※この上なく中途半端に終わっています。書きかけの没作品です
◆◇◆◇◆◇◆◇
「久坂が死んだ…?」
晋作は唖然とした。つい今し方その知らせを聞いた父の小忠太が晋作に伝えたその言葉は、晋作が予想していた最悪のシナリオそのものだった。
高杉晋作は牢に入れられていた。が、父の…
※書きかけで終わっている没作品です
※2008年10月~11月に書いたものです
※一部修正
◆◇◆◇◆◇◆◇
「まだ動いてはならぬ!」
「しかし武市(たけち)先生、長州は最早我慢の限界でござる!!」
「長州一藩の動きで我等土佐のみならず薩摩や他藩に大きな影響を与えることになるのだ。軽挙はお控え願いたい」
「軽挙と申…
※書きかけで終わっている没作品です
※2008年9月に書いたものです
※一部修正
◆◇◆◇◆◇◆◇
「縁談?」
桂は驚いた。
「縁談…て誰に?」
「私ですよぅ…助けて下さい桂さん!!」
久坂は泣き付いた。
「良かったじゃねぇか!よっ優男!」
「晋作くんっ!茶化さないでったら…」
「いやいっそ請けてし…
※前後してしまいますが、この作品は水葱の小説を受けて2008年11月頃に書いたもので、時系列的には夜編と午昼編の間(「闇は消え、そして」と「初夏の午後」の間)に入る話です
「皆、少し変わってしまった」
時は流れ移ろっていく。
水葱の憂いに気付く者はない。彼女の気持ちは真っ当なものなのに。
あの日…夜の髪の…
※この作品は2008年~2009年頃に書いたもので、「夢から醒めて」の続きです
強さって何だ。
守ることだけが強さなのか。
もし それが 強さなら
俺はそんな強さはいらない
「まーひるくん。こっちこっち」
水葱さんに呼ばれる。
「これだよこれ」
水葱さんの部…
※この作品は2008年6月~7月頃に書いたもので、「卒業、そして入隊」の続きです
真っ暗闇に、一筋の声。
「よる、可愛いよる。私のよる。こっちへおいで…」
誰。その声は…夕顔?
「さあ、早くおいで。一緒に暮らそう」
駄目、行っちゃ。
「駄目だよ、夕顔…。私は、行けない」
「よーる。愛しい…
※この作品は2008年5月頃に書いたもので、以前掲載した「午昼の決意」の続きです
「午ー昼くーん」
「なんだよ鬱陶しいな」
「午昼くんは何番隊に配属されたの?」
「一番隊」
「えっすごい!!」
「咲良は?」
「十番隊。日番谷隊長のとこv」
「良かったな」
「あーもう!顔が笑ってないぞぅ午昼くんたら!!」
…
※この作品は2008年6月に書いたものです
斬り殺せと言われたら斬り殺す。強くなれと言われたら強くなる。誰に言われた訳でもない、ただ己が誠を信じただけ。だから今回も、「上手くやれよ」と言われたら上手くやる。
それが沖田総司という男。誰も、裏切らない。
∵・∴・★
「嫌ですってば」
総司は島原…
※この作品は2008年6月に書いたものです
「総司ー!!総司はいねぇのかー?」
壬生の屯所に大声が響き渡る。
「原田組長、沖田組長なら先程道場の方にいらっしゃいましたが」
「道場…?」
左之助は首を傾げた。
「道場って…ここにはそんなもんねぇだろ?」
隊士はくすくすと笑うばかりだった。
∵・∴…
※この作品は2008年6月に書いたものです
「あのースミマセン」
人々が雑多に行き交う京都・二条通り。
「あーのー、スミマセンってー」
時は幕末。
「すいませんー。あの、この辺でこれくらいの若草の巾着が落ちていませんでしたか??」
「え…あ、いや」
二人の男が立ち話をしていた。
「あれ…
慶応四年 五月 三十日、新緑の映える頃、沖田総司は持病の労咳が悪化してこの世を去った。二十七歳だった。
戦わずして逝くことがどれ程無念であるかは計り知れない。
だが見方を変えれば倒幕派の手にかからずに済んだとも言える。
もしかすると黄泉の国から栞が、総司を守ってくれたのかもしれない。
晩年総司は、…
「一本勝負だと…?何を綺麗事をぬかしておるのだ、沖田殿は」
佐々木は刀を収める。それから総司の落とした菊一文字を拾いあげる。
「現在(いま)は三百年ぶりの天下動乱の時じゃ。鬼になりきらねば死ぬぞ、若過ぎる狼よ」
皮肉だった。
・・
総司は無言でそれを受け取ると、踵を返す。見廻組とのごたごたは局長の近藤勇を悩ま…
鎬の削れる音、人肉の切られる音、叫ぶ声、雨の音、提燈は飛び、首が飛び、雨粒が飛び、斬り合い、そして斬り合い、・・・敵も味方も入り乱れ、ごちゃ雑ぜになって、斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って。
その間 栞と総司は睨み合って…
「何者じゃ…!!」
平隊士が啖呵を切る。
「待って下さい」
総司はそれを止めた。
「…イリコですよね。それとも、『栞』って呼んだ方が良いですか」
「…」
双方動かなかった。長州の浪士達はひっそりと息を潜め、物音一つたてない。雨音だけがやけに耳についた。
「色町で再び逢った時、あの時すでにあなたの正体は割…
「お願いします、桂先生…!!」
再び場所は、長州藩邸に移る。栞は桂の部屋にいた。
「帰ってくるなり何を言い出すかと思えば、女の話じゃないのか栞。いきなり何なんだ」
「ですから先生、是非新選組の闇討ちを、ことに一番隊の天誅を、是非ぜひ拙者にやらせて戴きたく参上仕った次第で…」
「まぁまず落ち着け栞。…そうだな、実は…
「どうですか?」
「…美味しい」
「でしょ!?」
栞は困っていた。
何故なら、総司は敵だから。
(なんで俺、一緒にあんみつ食っているんだろ…)
その時、遠くで笛のような音がした。
「!!」
総司が反応する。
「どうしたんだ?」
「隊の呼び子です。見回りで何かあったんだ」
そう言うと総司は立ち上が…
「それにしても…色町で出会うなんて、本当に奇遇ですねぇ!」
総司はけらけらと笑った。
「あ、すみません…怒ってます?」
別に怒っている訳ではなくて、突然の事に反応が出来ないだけの栞であった。
「すみません、堪忍して下さいッ」
「や…別に気にしてないし」
「え、本当ですか!?」
よかったぁ、と笑う総司。
…
洛内河原町にある長州藩邸にて。
「一番隊 組長 沖田総司…細身で背も小さくまるで女子のようでしたが、さすがは壬生狼切っての剣腕の持ち主、剣の腕は他の隊士に比べるべくもなく、笑いながら人を切るとの噂も頷けました」
「うん、ご苦労だった。他に何か報告はあるか」
「いえ」
「そうか。なら下がって良いぞ」
「承知。御免!」
…
「あのースミマセン」
栞が総司をその目で確認してから、そんなに日にちも経っていないある日のこと。
「あーのー、スミマセンってー」
「は…」
い、と答えようとして、言葉に詰まった。そこに立っていたのは紛れもなく沖田総司本人だったのだ。
(俺が長州者だと知っての振る舞いか?)
栞は緊張した。が、
「すい…
「沖田、覚悟ォオォオオ!!!!」
晴天の下、叫び声が聞こえる。声の主は大刀を振りかぶり、一人の少年に後ろから襲いかかっていた。少年はひらりとそれを躱し、振り向き様胴を横に払った。
「ふぅ…」
少年は刃に付いた血糊を懐紙で拭き取ると、刀を収めた。
「沖田組長…!!」
どこぞから、浅葱色のだんだら羽織を着た浪士が数…
さむ空に蜜柑の実など映えており
踏まれても もみぢの錦 に変わりなく
木の間より見る月 確かに 美しく
学校のそばにある公園に、黄色い実のなる柑橘系の木があります。朝登校中に見上げると、高々となっている実が真青な空に実によく映えているのです。どんなに急いでいても毎朝ふと顔をあ…
「へぃらっしゃい!」
「酒」
「へぃ!…つまみは何にいたしやしょう」
「旦那のオススメ、頼むよ」
「へぃ承知!生帆立て、最後の一つは旦那で決まりだ」
「そいつァいい」
「へぃお待ち!…どうした旦那、浮かない顔して。そういや見ない顔だねェ」
「いや、ね。近頃ァ天下のお江戸も騒がしくなったもんだ」
「夷狄のお船が来てからもう…
ごめんね。
みんな嫌な風に思うだろうってのは分かってた。
だから余計悩んでた。みんなに打ち明けられるようなことじゃないし、ネットにむかって発散しちゃう・・。俺の悪い癖だ。親にさえ話せなかった。何度も言いかけたけど、「やっぱなんでもない」って言っちゃう。毎晩夜泣いた。試合なんて出たくなかった。
こんなとこに書いたらきっと葱が…
女の子はバスケ部だった。でも最近部活に出ていない。
ここずっとボールに触っていなかった。なのに今月は町内で小さな試合があって、月末には文化祭もある。
鬱だった。ずっと練習していなかったから、すごく下手糞になっている。なのに試合までにマシになるはずもない。
部活が嫌だった。
女の子は去年まで、ぼちぼち試合で活…
「母ちゃん。母ちゃんは何番隊だったん?」
「お父ちゃんとおんなじところよ」
「ほんなら、お父ちゃんは何番隊だったん?」
「母ちゃんと、おんなじところよ」
お袋は笑っていた。今思うとあの笑顔は、困り果てた苦笑いだったのかもしれない。けれど、とにかくお袋は笑っていて、決して辛そうではなかった。
「なんで教えてくれへ…
「午昼(まひる)ー、あなたー、ご飯よー」
「うえぇぅぇええん」
泣き声が庭に響き渡る。
「午昼!?」
「あーあー。急ぎ過ぎるからいけないんだよ、走ってコケるんだもん」
「あなたっ見てないで起こして下さいっ!!」
「ああごめんごめんー」
そう言うと男は、息子を抱き起こす。男は右目に眼帯をしていた。息子は一目散に縁側に…
玖潭は前に出ると夜を引き寄せた。「くた…」言いかけた夜の唇を玖潭の唇が覆う。「な…」竜藍が唖然とする。キスは長かった。その間、夜の髪は段々白っぽく、玖潭の髪は段々黒くなっていった。夜の闇が玖潭に移っているのだ。夜は本来の髪の色―藤色がかった白髪に戻っていった。目にも光が戻った。
唇が離れる。
「う…」玖潭は右目を押さえた。
…
「こいつらをみんな殺してしまいなさい、よる。そうしたら一緒に暮らしてあげるからね」
夕顔は笑顔だった。顔が凍り付く。
「そんなこと出来ない…!!」
「それなら私がこいつらとお前を殺さなきゃならないね…」
困り果てる。涙が溢れる。
「なんとなく状況が読めてきたぜ」
と言い、総は剣を抜いた。
その時竜藍は、先程夕顔…
「総先輩…!!と、玖潭くん!?」
驚いた。どうしてここに…?
「霊圧を追ってきた。…何があった?」
問い掛ける総。パッと見竜藍が夜を苛めているように見える。
「あ…」
玖潭が夕顔を見て驚く。
「やあ玖潭くん。久しぶりじゃないかぁ」
夕顔がほくそ笑む。
「え?玖潭くんと夕顔って知り合いだったの?」
驚く夜。
…
「“お前は俺を裏切れない。俺はお前を裏切らない。”」
闇に、声が響いた。
「俺は闇に手を貸すためにお前を連れて来たんじゃない。それなら俺はお前との縁を切る。…でも“どちらかが消えるまで側を離れない”という契約がある、だから俺はお前を殺して行く」
竜藍は静かに言った。目が、怖い。睨んでる訳でも笑っている訳でもない。感情が…
「夕顔…」
「思い出したぜ、よる。闇を写していたあの頃のことを」
「闇を写していた…?」
戸惑う。
「それじゃ、私を闇に呑ませたのは貴方だったのね」
まただ。また信じたくないものに裏切られる。
「いや」
否定の声。
「闇に呑ませたんじゃない。お前に闇を呑ませたんだ」
「私に闇を呑ませた…?」
「俺がやっていたのは…
竜藍に連れられてやって来たところは、辺り一面が真っ暗で真っ黒な、暗黒という言葉がぴったりの場所だった。だいぶ進んで時間と位置の感覚が有耶無耶になってきた頃、突然竜藍は足を止めた。
「りゅう…?」
「“翼蛇”。それが“あ奴”の名だ。そうだろ?」
「夕顔…?」
顔がこわ張るのが分かる。そこに立っている男は、夕顔とはまるでかけ…
「夕顔が…私を闇に呑ませた?」
思わず聞き返してしまった。
「そうだ」
竜藍は肯定しかしない。それもそのはず、『俺はお前を裏切らない、お前は俺を裏切れない』のが契約なのだから。
「嘘でしょう?ね、からかっているんだよね?」
嘘でも冗談でもいい。とにかく事実を否定して欲しかった。
「いや。お前は知っているはずだ」
い…
『とはいえ俺の持っている情報は未確認のものだ。ちゃんと確かめねーで言って良いようなレベルの問題じゃねぇからな、俺はこれからそれを確かめてくる。契約違反にならねーよーに、夜から離れる許可くれ』
みたいなことを言われた気がする。何でだろう、あの日の記憶が曖昧だ。たしかあの後、りゅうがそう言って消えた後、顔りんと葱が現われた。私と、…
「な…ななちゃん…?」
麻理子は目を見張った。
そこにいるのは、立っているのは、紛れもなく七緒なのである。それも、それ相応に歳をとっている。
「まりちゃん…。」
七緒は困った。
「月神さん!!これは尸魂界において違法行為…ッ」
「バレなきゃいーんですバレなきゃ」
自分のしたことがどれ程愚かなのかは解っている…
「七緒さ…いえ伊勢副隊長…ッ」
「月神さん…どうしたんですか息咳切らして」
七緒は訝しげに夜を見る。
「あの…ッあのあのこれ」
夜が突き出したのは、みすぼらしい“くまのぬいぐるみ”だった。
「何ですかこれ」
「覚えていませんか…?」
「え?」
「伊勢副隊長の、くまちゃんですよ」
そう言われて、気付く。こ…
麻理子さんが夜に渡したのは、クマのぬいぐるみだった。もう随分昔のもののようで、糸はほつれ、手垢で汚れていて、汚ならしいというよりはみすぼらしい。
「これはね、昔ななちゃんから借りていたぬいぐるみなの。何度か返して欲しいって言われたんだけど、私が嫌だって言って返さなかったのよね。ななちゃんが亡くなってからも、お葬式の時に一緒に棺…
成り行きで七菫の家に行くことになってしまった。なんで…早く隊務(隊長に君に届●を届ける)を終わらせたいのに。
「あら?かずくん?」
途中、見知らぬ女性に声をかけられる。
「麻理子さん…!」
「可愛い子連れてるわね。もしかして彼女?」
「「誰がこんな奴と付き合うんですかッッッ!!!」」
…ハモってしまった。くすくすと笑…
何かが飛んできた。
でもって、俺の頭にぶっかった。
でも、そんなコトはどうでもよくて…
麻理子さんに贈るはずの、花が。
せっかく買った、花が。
反動で落ちた縫いぐるみに、おしつぶされた、ってコト…。
「…ごめん」
ざけんなよッ…って叫び出したいのを、我慢する。どうやら相手は悪気ないっぽい…
「なーちゃん、『君●届け』読みたい」
「は…?」
「『君に●け』、読みたいの」
「・・・現世まで買って来いと?」
「うんv」
こうして夜は、現世に来た。
たった一人で。
漫画一冊買うために。
「あーもう!!」
機嫌はすこぶる悪かった。
ショルダーバッグから恐竜の縫いぐるみ(※竜…
「あ、かずくん!ケーキ買って来たんだけど、どれがいい?」
麻理子さんは真っ白な箱からショートケーキを取り出しながら、俺に声をかけてきた。
「なんでもいいです」
「麻理子ちゃん、いつも悪いわねぇ」
「いえ。あ、じゃあかずくんチーズケーキでいい?」
ケーキは次々と皿に移されて、居座る。六枚の皿全てにケーキがふてぶて…
「ちっちゃいおじさん」は本当にいるのかもしれない。
七菫(かずき)がそう思ったのは、ほんの些細な、本当に小さなことからだった。
初めて「ちっちゃいおじさん」の存在を知ったのは、とある少女漫画を見たときだった。別に七菫にそういう趣味があるわけではなくて、麻理子さんが勧めてくれたから読んだだけだ。タイトルや表紙を見るだけでも…
「りゅう」
竜藍はそのまま斬魄刀を離さない。嘘のように鮮やかな血が、落ちて地を紅く染める。ぽた、ぽた、と止めどなく…。
「は‥離せ…っ!貴様、何者…」
小娘は思いがけない事態に取り乱していた。
「落ち着け。お前、勘違いしているよ」
竜藍が力ずくで小娘の小太刀をもぎ取る。あっと彼女は短い悲鳴を上げた。
「あ…
隊舎に着くと、夜は真っ先に納屋に向かった。いつも薄暗い納屋は、夜が扉を開けるとうっすらと明るくなる。そこには滅多に使うことのない道具や、もう日の目を見ることのないだろうガラクタ達が雑多に置かれている。全体的にぼんやりとした、埃っぽい部屋だった。
零番隊。やっと掴んだ手掛かり。それが夕顔と繋がっているのかは分からないけれど、…