夢から醒めて

※この作品は2008年6月~7月頃に書いたもので、「卒業、そして入隊」の続きです



真っ暗闇に、一筋の声。

「よる、可愛いよる。私のよる。こっちへおいで…」

誰。その声は…夕顔?

「さあ、早くおいで。一緒に暮らそう」

駄目、行っちゃ。

「駄目だよ、夕顔…。私は、行けない」

「よーる。愛しいよる。早く私の元へ返っておくれ」
「行かない」
「早くするんだ、よる。早くしないと」


「僕がどうなってもいーんだね」


「!!!!!」

血塗れの、首が…玖潭の、首が…夕顔の足元に転がっていた。






「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…」
目の前は明るかった。見慣れた風景…夜の家だった。
「大丈夫ですか」
隣りで声がする。
「憩ちゃん…?」

憩ちゃんが、いた。具合が悪くなってから、定期的に通ってもらっているのだ。他の十四番隊のメンバーは任務が山程あるから、訪ねてきたことは一度もない。

「随分とうなされていたみたいですが…」
「ハァ、…そっか、夢だったんだね」
「夢…ですか」

考えて見れば当然だ。夕顔はとうの昔に死んでいる。玖潭くんだって…。

「最近嫌な夢ばかりよ」
「嫌な夢、ですか?」
「同じような夢ばかり。…夕顔と、玖潭くんが出てくるの」

私が愛した二人の男。

「きっと、怨まれてるんだわ。…私は二人を殺してしまったから」
「そんな」
憩ちゃんが叫ぶ。
「そんなことないです。夜さんは誰も殺してなんかいませんよ」

更に続ける。
「そういう夢は、自分に負い目があるから見てしまうんです。思い込みです。このままでは良くなる病も良くなりません」
「玖潭…」
「え?」

気が付けば、呟いていた。
口に出すと、懐かしくて辛くて切なくて。悔しくて。

「玖潭くんに、会いたいなあ」
涙は出なかった。憩ちゃんは言葉を失った。

最近こういう夢を見るのは、二人が私を地獄に連れ出そうとしているからなんじゃないかと思っている。

それもいいかな、と思っていたりもする。 だけど現実は、死ねば現世に新しい命として生まれるだけだ。


「今は」
二人に会いたいけれど
「まだ死ねない」
だって
「午昼が、一人になっちゃう」

ほっ、と憩ちゃんの口から吐息が漏れた。

「そうですよ、早く元気になりませんと」
「午昼は、どうしてるのかしら。もう十四番隊には慣れたかな」
「頑張っているらしいですよ」

憩ちゃんは、話し始めた。

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